【TOEIC 900点特急 レビュー記事】
ご覧いただき、ありがとうございます。
TOEIC対策のリノキア英語スクールです。
今回は、『TOEIC L&R TEST 900点特急パート5&6』のレビュー記事です。
その名の通り、TOEIC高得点を目指している中上級者向けのテキストです。
僕はTOEIC990点を取得してから、このテキストを使い始めたのですが、けっこう間違えた問題があり、「勉強になるなあ」と思いながら、たくさんの箇所にマーカーを引いていました。
このテキストの優れた点は、ただ難しいだけじゃないということです。
市販されているハイレベルなテキストや模試の中には、「無理やり」難しくしているものが少なからず見受けられます。
「どうだ、難しいだろ!」と言わんばかりに、敢えて間違わせるような問題を入れているわけです。
ただ、問題の難易度を上げるときの匙加減は、調整するのが難しいのも事実です。
僕自身も、ほとんど趣味の領域ではありますが、問題を作ることがあるので、そのあたりはよくわかります。
難しい単語だけを入れて作ればハイレベルな語彙問題ができますし、細かい文法知識を問うものにすればハイレベルな文法問題ができます。
でも果たして、そんな難しいだけの問題がTOEICに役立つのでしょうか。
TOEICにおけるハイレベルな問題というのは、TOEICの出題範囲内で作られるべきです。
TOEICの出題範囲というのは、定義がはっきり決まっているわけではありませんが、「受験者としての経験・感覚」によって分かってくるものだと思います。
つまり、TOEICをたくさん受験し、研究している人ほど、「なにがTOEICに出るか」がよくわかってきます。
それにプラスして、「指導者としての経験」も、ハイレベル問題を作るには欠かせないと思います。
TOEICに向けて学習している人が、どんなところでつまずくか、どんな問題を間違えるのかを知っている人ほど、多くの人に共通する「穴」を発見できます。
これは実際に生徒さんと向き合わないことには獲得できない気づきです。
このテキストの著者である加藤優さんは、「TOEIC受験者としての経験・感覚」もあれば、「指導者としての経験」もお持ちです。
収録されている問題はハイレベルなものがほとんどですが、そのすべてがTOEICという的から1ミリたりともズレていないのです。
難しさを維持しながらTOEICから離れないというのは、なかなかできることではありません。
また、TOEIC対策という名目をつけていながらも、このテキストの真の目的は英語力アップにあるのではないかと僕は思っています。
最初はこのテキストをTOEIC対策として使い始めるかもしれませんが、繰り返し使っていくうちに英語力そのものがアップしていって、結果的にTOEICのスコアも上がったという結末が想像できるのです。
「ただ難しいだけじゃない」と思う所以は、そこにあります。
英語力を上げるために必要な分だけの難しさに調整されているため、たしかに楽なテキストではないけれども、何回も繰り返したら、ちゃんとそれに見合った実力がつくように設計されているのです。
こんなテキストは、そう簡単に作れるものではありません。
そこに投入された時間や労力を想像すると、このテキストはもっと多くの人に使われるべきだと思います。
そこで微力ではありますが、この記事によって、『TOEIC L&R TEST 900点特急パート5&6』がさらに多くの学習者によって使用されることを願って、レビュー記事を書こうとするに至りました。
TOEIC対策のテキスト選びの参考にもしていただければ、幸いでございます。
それではレビュー記事のスタートです。
推奨レベルは?
テキストのタイトルに「900点」とあるので、本来ならば「900点を目指す全ての学習者」と書きたいところなのですが、問題そのものがレベル高めなので、ある程度の基礎ができていないと独習でやるのは難しいと思います。
したがって、ある程度の基礎があると思われる「700点以上のスコア」を持っている方が対象になるのではないでしょうか。
それから、「900点」といわず、「800点以上」を目指す方にも使っていただきたいです。
Part5,6の正答率というのは、800点や900点を取るための大きなポイントになります。
Part7の場合だと、800点以上を目指す人たちは「時間さえあれば解ける」という状態であることが多いのですが、Part5,6は時間があったところで正答率がそこまで変わるわけではありません。
「知っているかどうか」が明暗を分ける問題がほとんどです。
この『900点特急』は、800点以上を目指す上で知っておきたい単語・文法を網羅しているので、知識をつけたい方に使ってほしいです。
また、すこし頻度は落ちますが、「見抜けるかどうか」を試すような問題もTOEICのPart5,6には出てきます。
Sがどれで、Vがどれかを見抜いたり、動詞だと思っていた単語が実は名詞の意味で使われていることを見抜いたりしないと解けない問題のことですね。
そうした問題を解くときに必要な、英語を読む「目」も、このテキストでは養えます。
収録されている問題には、ただ単に「知っているかどうか」を試すだけでなく、「SとVがちゃんと把握できていますか?」と問いかけてくるかのような絶妙な英文で書かれているものが含まれています。
僕がこのテキストを使って良かったと思ったのは、そこでした。
主語と動詞を把握するという基本中の基本がどれだけ大事であるかを再確認することができたのです。
ハイレベル問題集でありながら基礎を疎かにしない姿勢に、個人的にとても惹かれるものがありました。
内容はどんな感じ?
けっこうなボリューム
各章は「ラウンド」という名前で区切られています。
1ラウンドに、Part5形式が15問+Part6形式が8問(2パッセージ)収録されています。
ラウンドは全部で6つあり、それ以外に「Bonus Questions」という名前の「990点レベル問題」が12問おまけとして入っています。
したがって、この1冊のなかに、150問の問題が収録されているわけです。
この150問を、多いとみるか少ないとみるかは個人によって変わりますが、僕の場合は、けっこう多いと感じました。
というのも、どの問題も簡単ではないので、しっかり根拠をもって解答しなくてはいけません。頭を使わないと解けない問題は、それなりに時間とエネルギーを使います。
テクニックを使って機械的に解けるものは無いと思ったほうがいいです。
そして解説はとても丁寧です。
大事なことが盛りだくさんなので、読み込む時間もちゃんと確保しておきたいところです。
良いテキストの条件かもしれませんが、この1冊で理解が完結します。
誤答についても、なぜそれがダメなのかを解説してくれているので、モヤモヤが残るということは無さそうです。
また、Part5の問題ページには、「Katoの眼」という、ちょっとしたヒントが載っています。
どこが問題のポイントなのかを教えてくれるため、自力で解きたいという方は、「Katoの眼」を見ないように気を付けたほうがいいと思います。
実力のある人だと、そのヒントを頼りに正解が分かってしまうこともあります。
それから、各ラウンドの始めにコラムがあり、楽しんで読めます。
個人的には「テクニックからの脱却」というタイトルのコラムが好きです。
900点を超えるには、テクニックではなく英語力を伸ばすことが必要という主張は、まさにそのとおりだと思います。
僕個人も、「英語力を上げるためにTOEICをやる」というポリシーを持っています。
TOEIC指導をしつつも、どうやって英語を使うほうにつなげていくかを常に考えており、目標スコアを取ったその先につながるような学習を生徒さんたちにしてもらいたいという理想があります。
『900点特急』は、TOEIC対策テキストであるにも関わらず、英語力そのものを上げることを本当のゴールに定めているみたいで、僕はそこが好きです。
まとめ
オススメ度| ★★★★★(満点)
本当に丁寧に作られた「究極の1冊」だと思います。
問題の質、解説の質はともに最高のものでありながら、150問というボリュームも確保しつつ、値段が900円ちょっとというのは、素晴らしいの一言に尽きます。
学習者を第一に考えた、良心的なテキストです。
僕はこのテキストを3周ほど繰り返して学習しました。
繰り返すごとにテキストが持つ奥深さが分かっていき、英語のセンスが鋭くなっていくのを感じました。
おそらく、1周しただけでは、このテキストが教えてくれるすべてを吸収するのは難しいでしょう。
頭で理解して終わりにしてしまうには、あまりにも勿体ないテキストです。
感覚として組み込まれるまで刷り込んでこそ本当の英語力につながり、TOEICのスコアも上がっていくのだと思います。
タイトルには「900点」とありますが、700点を突破したあたりから使い始めても問題ありません。むしろ、どんどん使ってほしいと思っています。
繰り返しになりますが、このテキストはTOEIC900点のためというよりも、英語力そのものを上げることを考えて作られているというのが、僕個人の解釈です。
英語力が上がれば、自然とTOEICのスコアも上がります。
著者もそういう信念で、このテキストを作ったのではないでしょうか。
好きなテキストなので、紹介するとどうしても熱くなってしまいますね。
この記事が、みなさんのテキスト選びの参考になれば幸いでございます。
それでは以上、『TOEIC L&R TEST 900点特急パート5&6』のレビュー記事でした。
ご覧いただき、ありがとうございました。