全国通訳案内士のテキスト紹介
ご覧いただき、ありがとうございます。
リノキア英語スクールの鈴木彰憲です。
今回は「全国通訳案内士」の1次試験に向けて使用したテキストを紹介いたします。
TOEICの本ほどではありませんが、全国通訳案内士のテキストもそれなりに多数出版されており、受験者としては、どれがいいのか迷ってしまいます。
また、試験問題にも独特のクセがあるので、「地理」や「一般常識」という試験科目にも、「全国通訳案内士として必要とされる」といった前置きが入ると思っておかないと、方向性のまったく違った勉強をすることになります。
僕は2019年度の全国通訳案内士試験に合格したのですが、「完全独学」で勉強していたおかげで、テキストをいろいろ買って試すことになりました。
合格したあとで振り返ると、「買ってよかった」テキストが少なからずあります。
しかし一方で、中には「買わなくてよかった」テキストも当然ありました。
本屋さんでしっかりと吟味して買ったつもりだったのですが、2,3日続けて使ってみると、「あれ、なんか違う」という感覚になり、そのまま使うのをやめてしまいました。
対策をスタートしたばかりだと、特にこういうことが起こりやすいと思います。
この記事では、これから受験される方のテキスト選びの参考となるよう、僕が実際に購入・使用したテキストのうち、「買って良かったもの」と「買わなくてよかったもの」を紹介していこうと思います。
全国通訳案内士を目指す方の一助となれば幸いです。
なお、僕は1次試験の英語だけ免除となったため、日本地理・日本史・一般常識・通訳案内の実務の4つに対応したテキスト紹介をしていきます。
買ってよかったテキスト紹介
1.全国通訳案内士 地理・歴史・一般常識過去問解説
まずは過去問を解いてみて、自分がどのくらい正解できるのかを確認するところからスタートするのがいいと思います。
「せっかくの過去問なんだから、しっかり勉強してから解かないともったいない」と考える方もいらっしゃいますが、全国通訳案内士試験においては、過去問がそこまで価値を持ちません。
というのも、傾向や難易度が年度ごとに大きく変わるため、過去問から得られるものが少ないのです。
また、一般常識は、その年度でのタイムリーな話題が出題されるため、古い問題を解いても、古い知識しか増えないので、過去問を使うときは、「どんな話題が取り上げられる傾向にあるのか」を見るくらいで大丈夫です。
まずは前年度の過去問を解いてみて、受験を決めた段階での正解数や点数を出してみましょう。
参考までに、日本地理と日本史は合格基準が70点(100点満点)、一般常識と通訳案内の実務は30点(50点満点)とされています。
合格までの距離を知って、なにを勉強していくべきかを決めていきましょう。
また、全国通訳案内士の過去問を出版している会社はいくつかありますが、どれを使っても大差はありません。
前述のとおり、過去問は「自分の足りない部分を知る」+「試験の傾向を知る」ことに意味があるため、解説の質による差別化がされにくいです。
値段で選んでもいいですし、パラパラとめくっての印象で決めてもいいです。
ここでは、僕が使用した過去問テキストを紹介しておきます。
2.全国通訳案内士試験「地理・歴史・一般常識・実務」直前対策
これ1冊で、全国通訳案内士を受験するためのベース知識が得られます。
表紙には「2018年版の新出題基準に対応」と書いてありますが、2019年度受験の僕が使用してもまったく大丈夫でした。
年度が古いことで困るのは「一般常識」だけです。
一般常識については、オススメのテキストがあるので、後ほど紹介します。
このテキストのいいところについてですが、重要事項がまとまっていることです。
日本地理は、47都道府県の重要ポイントがコンパクトにまとまっています。
日本史のほうは、ストーリー性と、考察を伴って書かれているので、読み物として面白いです。
日本地理は2回、日本史は10回以上くりかえして読みました。
ただ、あくまでも日本地理、日本史の「基礎知識」が得られるということにご注意ください。
1次試験でしっかりと合格するには、もっと幅広い知識が必要になります。
このテキストは、日本地理・日本史の「入門編」と思っておいたほうがいいです。
通訳案内の実務に関しては、予想問題のような形式になっています。
「直前対策」というタイトルのとおり、実践的な知識・理解をチェックするのに使えます(ただし、このテキストの予想問題形式は、本番の形式とは違います。でも理解度を深められるのは確かなので、気にせず使用して大丈夫です)。
3.ユーキャンの全国通訳案内士<地理・歴史・一般常識・実務> 速習テキスト&予想模試【通訳案内の実務に対応! 】
内容的には、前出のテキストと変わりません。
こちらも日本地理・日本史の「入門編」レベルになります。
網羅している内容に、ちょっとした違いはありますが、日本地理・日本史の対策としてなら、どちらを使ってもいいと思います。レイアウトや雰囲気でも、好みの違いが出るかもしれません。
前出の「直前対策」は、タイトル通り、本当に重要なポイントだけに絞っている印象です。
そしてテキスト自体は「硬派」な感じで一貫しています。
ユーキャンのほうが、網羅している内容がちょっとだけ多いかなという気がします。
また、予想模試がついているのも、けっこうポイントが高かったです。
テイスト的には「ポップ」な感じですので、とっつきやすいかなと思います。
最大の違いは、通訳案内の実務の扱い方ですかね。
「直前対策」が予想問題形式だったのに対し、ユーキャンはテキスト形式です。
ただ、実際に2冊とも使っての感想で言うと、通訳案内の実務に関しては、ユーキャンの1冊で大丈夫です。
法律や慣習などの重要事項がまとめられているので、知識をつけるのに使えます。
余談ですが、僕は通訳案内の実務を甘く見ており、本番で点数が取れずにヒヤヒヤしました。
当日の試験問題は、ユーキャンのテキストに書いてある内容からしっかり出ており、ちゃんと読んでおけば40点(50点満点)は取れた感じです。
僕は2回くらいしか読まなかったので、自己採点は28点で危ない思いをしました。
※値段が高騰していたり、最新版が出ている場合もありますので、ご注意ください。
4.全国通訳案内士試験「一般常識」直前対策問題集2019年度版
こちらは「一般常識」だけに特化した直前対策問題集です。
全国通訳案内士の一般常識は、「観光ベース」での一般常識を意味します。
そのため、SPIとかで解かされるような一般常識とは異なります。
そして、その年度においてホットな内容が出題されますので、過去問はそれほど参考になりません。どのトピックが狙われるのかを想像するのには使えるかもしれませんが、普段の勉強としては、その受験年度に対応した知識をつけるのに専念して大丈夫です。
この本が出版されたのは、1次試験の50日前でした。
50日もあれば、しっかりと学習できる内容ですので、焦らなくて大丈夫です。
最新版がいつ出版されるかは分かりませんので、こまめにチェックしておいたほうが良いと思います。
また、最新版が出ない可能性があるかもしれないので、普段からニュースを見て、観光に関連したトピック・イベントを覚えておくと安心です。
一般常識対策の方針がわからないときは、古い版であることを承知の上でこのテキストを購入して、自分なりに最新年度版にアップデートしていくのが良いでしょう。
たとえば、2019年試験では度は「ラグビーワールドカップ」だったり、百舌鳥・古市古墳の世界遺産登録の伴い、「ユネスコによって認定された遺産」が重要事項となりました。
最新年度でも、こうしたタイムリーな話題がありますので、前年度を参考に、自分なりにポイントをリサーチして、私家版テキストを作っていけると安心です。
ともあれ、全国通訳案内士にとって必要なリサーチ・スキルだと思いますので、実際に通訳案内業をすることを想像しながら試験対策できると、モチベーションも上がります。
5.旅行業実務シリーズ4 国内観光資源
こちらはJTB総合研究所が出版しているテキストです。
国内・総合旅行業務取扱管理者試験に向けたテキストですが、全国通訳案内士の日本地理の対策としても非常に使えます。
全国通訳案内士の日本地理は、大学入試や高校入試の地理とは別科目です。
「観光ベース」での地理になりますので、専用の勉強が必要です。
僕が受験した2019年度版は、こんな感じでした。
このテキストは、日本地理の知識を広げ、深めるのに使えます。
先ほど紹介したユーキャンなどのテキストは「入門編」でしかないため、それだけでは合格点には届かないと思ったほうがいいです。
日本地理の勉強には終わりがないため、使用するテキストを決めておかないと、あまりの出題範囲の広さに不安を覚えることになります。
この『国内観光資源』は、レギュラーテキストとして、試験対策の最初から最後までサポートしてくれるのでオススメです。
僕は5ヵ月ほどかけて、このテキストに取り組みましたが、おかげで本試験の日本地理では自己採点で95点(100点満点)が取れました。
必ずや期待に応えてくれるテキストです。
※JTB総合研究所 『国内観光資源』のページに飛びます。
https://www.tourism.jp/store/item/books/testprep-4-domestic-tourism-attractions/
6.国内観光地理サブノート
こちらもJTB総合研究所から出ているテキストです。
前出の『国内観光資源』に対応したノートです。
中身はこのようになっています。
都道府県ごとにページが分かれており、観光スポットやイベントなどを書き込めるようになっています。
最終的には、写真のように空欄をすべて埋めましたが、知識が定着するまでは直接書き込まずに、問題集として使いました。
7周くらい繰り返したので、かなり知識はつきました。
初見で過去問をやっても、しっかり合格点が取れるようになり、1次試験の2週間前には「地理は大丈夫。むしろ満点を取ってやる」と思えるくらいの自信がつきました。
補足ですが、余白も多いため、自分でプラスアルファの知識をメモしておきたいときに便利です。
このように解答冊子もついています。
『国内観光資源』とセットで使うためのテキストです。
※JTB総合研究所 『国内観光地理サブノート』のページに飛びます。
https://www.tourism.jp/store/item/books/domestic-geography-subnote/
7.地図で訪ねる歴史の舞台 日本
こちらは日本史対策として使いました。
読むだけでも面白いです。
全国通訳案内士の日本史もまた、大学受験や高校受験の日本史とは異なります。
やはり「観光ベース」であるため、観光スポットに関連した歴史を学んでいく必要があります。
したがって、学習法としては、日本地理と連動させていくのが良いです。
たとえば、日本地理を勉強する中で、函館の観光名所として五稜郭を覚えるとします。
そしたら今度は五稜郭を歴史の観点から深めていきます。
すると「戊辰戦争」や「榎本武揚」といったキーワードにつながります。
さらに派生させて、「北海道内で榎本武揚がフィーチャーされているスポット」を調べていきます。
こういう紐づけした勉強が、全国通訳案内士の日本史では大事になります。
実際のところ、歴史知識だけでなく、雑学的、あるいは地理的知識も混ざってくるので、純粋な「日本史」とは呼べないのが、この科目なのです。
『地図で訪ねる歴史の舞台』は、地理と結びつけながら日本史が学べます。
実際にその地を歩いていることを想像しながら勉強できるので、学習そのものが楽しめると思います。
8.山川 ビジュアル版 日本史図録
全国通訳案内士の日本史には、仏像や建造物の写真がよく使われます。
僕が受験した2019年度は、特に多かったみたいで、20枚以上もの写真がテストに出ていました。
歴史だけでなく、日本地理の勉強でも役立ちます。
お寺のような歴史ある観光スポットを覚える必要があるのですが、ビジュアルでも参照したいときに便利でした。
また、美術品に関する出題もあります。
近現代の芸術家たちによる有名な美術品は押さえておいたほうがいいでしょう。
また、それらが収蔵されている美術館の場所まで覚えていると、地理・歴史2つのテストで対応できます。
9.書き込み教科書 詳説 日本史
こちらは書き込み式の教科書です。
書きながらキーワードを復習したいと思って買いました。
重要事項をおさらいできたのはもちろんでしたが、歴史の流れや因果関係なども整理できたので、思わぬ副産物がありました。
全国通訳案内士のテストを基準にすると、このテキストをすべてやる必要はありません。
僕は、聖徳太子が出てきたところから、明治維新のあたりまでに絞りました。
実際に出題されるのも、その範囲が中心なので、絞っても問題ありません。
また、テストを受けて思ったのは、「文化史の勉強をやっておいてよかった」ということです。
文化に関する出題は、必ずありますので、明治以降もカバーしておいたほうがいいです。
このテキストは書き込み式になっているので、まずは問題を解くみたいに空所を埋めながら読み進めていきました。
一通り、すべてが埋まってから、もう1度だけ通読しました。
なので、読んだ回数は2回ですね。
量的にけっこうあるので、それだけできれば十分です。
大事なところは『国内観光地理サブノート』にメモしていきました。
買ったけど使わなかったテキスト紹介
続いては、買わなくてもよかったテキストたちです。
独学でやっていると、自分の勉強法が正しいのかが分からず、不安になるときがどうしてもあって、つい本屋さんに行っては新しいテキストを買ってしまったりします。
そして使い始めてみると、「なんか微妙」となって、そのまま放置……というテキストがいくつかありました。
僕が実際に買ってみて、見事に使わなかったテキストも紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.ニュース検定シリーズ
まだ一般常識の「直前対策」が出ていなかったとき、どうやって勉強したらいいのかが分からずに買ってみたテキストです。
実際のところ、ニュース検定に出てくる時事問題は、全国通訳案内士の時事問題とは異なります。
そもそも全国通訳案内士の一般常識は「観光ベース」であるため、正面切っての時事問題であるニュース検定は対応していないのです。
わりと1冊が高かったので、買って後悔したテキストでした。
勉強が不安になると、こういう余計な買い物が増えてしまうので気をつけてください。
2.通訳ガイド用語事典―日本の地理・歴史を理解するために
こちらは、全国通訳案内士の対策法が分かっていなかった時期に買ったものです。
1回も使いませんでした。
地理の用語集としては、『国内観光資源』で十分ですし、日本史の用語集としては、山川のを持っていたので事足りました。
各用語の解説があっさりしているので、用語集としての内容的にもイマイチです。
例によって高いので、よっぽどの必要性でもない限り(具体的にどんな状況か思いつきませんが)、買わなくていいと思います。
3.観光白書
全国通訳案内士の一般常識は、『観光白書』からも出題されるとネットで読んで買ったものです。
『観光白書』から出題されるのは事実なのですが、かなり限定的です。
訪日外国人数とか、国籍別での消費傾向などを押さえておけば大丈夫なのですが、これは市販のテキストでもわかることですし、ネットを見ても得られる情報です。
わざわざ『観光白書』を買うこともありません。
それに内容がかなり細かいので、僕はあまり読む気になれませんでした。
4.詳説日本史 改訂版 ノート
日本史の問題集があったほうがいいだろうと思って買いました。
前述のとおり、全国通訳案内士の日本史は、受験科目の日本史とは異なります。
教科書などを読んで流れを把握するのは正しい対策になりますが、大学受験を意識したようなテキストを使ってしまうと、ピントがずれた勉強になります。
まだ日本史の対策方法がわかっていなかったとき、これを2週間くらい解いていましたが、全国通訳案内士の過去問と見比べてみたら、「なんか違う」と感じて、使うのをやめました。
全国通訳案内士試験には向いていなかったです。
5.日本の古寺101選―宗派別に特長と楽しみ方がわかる!
この本自体は、とても面白い本です。
地理や歴史の勉強をしているときに、「もっと深く学んだほうがいいのではないか?」と思うようになり、マニアックな本をいくつか購入しました。
そのうちの1冊です。
ただ実際は、この本をしっかり読み込む時間が取れませんでした。
興味が広がるのはいいことだと思いますが、無作為に手を広げすぎると、かえって方向性を見失う結果となります。
僕は、マニアックな本をいくつか買ってからそれに気づき、使用するテキストを絞るようにしました。
誤解の内容に繰り返しますが、この本自体は、とても面白い本です。
全国通訳案内士のテストが終わってから読みました。
6.日本の城完全ガイド
こちらも、『日本の古寺101選』と同じノリで買いました。
勉強が進むと、こういうマニアック路線に行ってしまう可能性があるので、気をつけてください。
ただ、余裕があるのなら取り組んでみて良いと思います。
マニアックな知識があると、2次試験で話を広げやすくなるので、トピックさえ外れなければ、楽しいガイドができるはずです。
こちらも、雑誌そのものは興味深い内容です。
僕は、使いこなすだけの時間的な余裕がなかっただけなのです!
終わりに
以上、僕が全国通訳案内士試験の対策をするうえで、購入したテキストの紹介でした。
今回は、1次試験に絞ったテキスト紹介となっておりますので、2次試験用のテキスト紹介は、また別の機会でやらせていただこうと思います。
全国通訳案内士試験を受けようと決めた僕の勉強は、旅行代理店に行って、無料のパンフレットをもらうところからスタートしました。
そこからネットで情報を集め、テキストを購入し、使えるものと使えないものを実体験を通して判別しながら、合格に必要だと思うテキストだけを残して、試験対策をしました。
余計な時間も使ったし、余計なお金も使いました。
もっと効率的な方法だって、きっとあったでしょう。
でも、それが無駄だったとは思いません。
予備校などに通うことなく、自分の頭を使って「合格に必要な勉強」を探した経験が、今後この全国通訳案内士という試験を目指す方のお役に立つと信じています。
1次試験に向けて対策をしているときは、いつも不安がありました。
「本当にこの勉強で合格できるのだろうか?」と。
でも、その一方で、外国人に観光案内をしている自分を想像すると、「もっと頑張らなくちゃ」と思えてきて、勉強に対して前向きになれました。
全国通訳案内士は、合格して終わりではありません。
合格後にも、さらに勉強は続きます。
全国通訳案内士として活躍している僕の友人を見ていると、そう思います。
この記事が、これから全国通訳案内士を目指す方の勉強の一助となれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました。