全国通訳案内士に一発合格した勉強法を公開

ご覧いただき、ありがとうございます。

TOEIC対策のリノキア英語スクールです。

今回は、全国通訳案内士の試験に合格したノウハウをお伝えいたします。

僕は2019年の全国通訳案内士(英語)試験で一発合格することができました。

独学だったため、勉強法やテキストは試行錯誤の連続でした。

この体験をシェアすることで、これから全国通訳案内士を目指す方々のお役に立てるのではないかと思い、こうした記事を書くことに決めました。

かなり長いのですが、最後までお読みいただければ幸いでございます。

1.はじめに ~全国通訳案内士を受験した理由~

僕はこれまで日本だけで英語学習をしてきました。
帰国子女でもなければ、留学経験もありません。
普通の日本人が、普通に英語を学んできました。

全国通訳案内士を受験しようと決めたのは2019年1月のことです。
2020年にオリンピックを控え、「世界を日本に迎える」というゴールが現実として感じられたのです。

2019年2月には過去問を購入して、試験対策を始めました。
半年後、2019年8月18日に行われた全国通訳案内士の1次試験に合格しました。
さらに4ヶ月後、12月8日に行われた2次試験に合格しました。

2019年度の全国通訳案内士の合格率は8.5%
僕は「完全独学」で「一発合格」することができました。

この記事は、これから全国通訳案内士を目指す方の役に立ちたいという思いからスタートしています。
僕の試行錯誤が、少しでも参考になれば幸いです。

2.筆者のステータス

※全国通訳案内士の受験を決めた2019年1月時点での状態です。

  1. 英語力:TOEIC990点、英検1級
  2. 社会科知識:日本史検定4級  

    追記:実は日本史検定2級を持っていたことが試験後に判明しました。なにしろ合格したのが12年前だったので、すっかり忘れていました。試験を機に、勉強し直せて良かったと思っています。

アドバンテージは、このくらいでしょうか。
ただ、日本史検定4級は初歩レベルなので、利点にはなりません。
1次試験の科目が「免除」となるには、ある程度のレベルが必要になります。
以下にまとめました(2020年3月時点)。

  1. 英語
    英検1級
    TOEIC 900点
    TOEIC Speaking Test 160点
    TOEIC Writing Test 170点

    ※いずれかを取得していれば、英語が「免除」になります。

個人的には、TOEIC Writing Test170点が狙い目ではないかと思います。
受験料は高いですが、ライティングテストなので、日本人には向いています。

  1. 日本歴史:
    歴史検定(日本史)1級または2級
    センター試験 日本史B 60点以上

    ※いずれかを取得していれば、日本歴史が「免除」になります。

センター試験は今後どうなるかわからないので、免除狙いなら日本史検定2級がオススメかもしれません。

特に2019年度の日本歴史の問題は「激ムズ」だったと話題になりました。
ひとことで言えば、「歴史の知識があっても解けない」ものが多かったと思います。
問題傾向が安定していないと言えるのでしょう。
そう考えると、日本歴史は「免除」を狙うほうが楽かもしれません。

  1. 日本地理:
    旅行業務取扱管理者資格

    ※取得していれば日本地理が「免除」となります。

僕はこの試験については何も知らないので、語る資格がありません。
ただ、何も勉強していない状態で日本地理の過去問を解いてみて、40~50点が取れたなら、免除を狙わずとも突破できると思っています(実際に僕がそうでした)。

  1. 一般常識:
    センター試験 現代社会 80点以上

    ※取得していれば一般常識が「免除」となります。

2019年の一般常識は、個人的に難しいと感じました。
対策がやっかいなので、免除を狙えるなら狙ってしまいたいところです。
しかし、センター試験がどうなるかわからないので、今後も利用できるのかわかりません。
個人的には「ニュース検定」などが免除条件になったりしないかな……と考えております。
※ただ、ニュース検定は、全国通訳案内士の一般常識対策には向いていません。テキストを購入してから気づいたので、お金を無駄にしました。

  1. 通訳案内の実務:
    2018年度試験から追加されたこの科目には、免除条件がありません。

今のところ、そこまで徹底した勉強が必要なわけではないので、警戒しなくて大丈夫かと思っています(僕は甘く見過ぎて、本番後に後悔しました)。

最終的に、僕が出願した1次試験の内容は、こんな感じでした

外国語(英語):免除
日本地理:受験
日本歴史:受験
一般常識:受験
通訳案内の実務:受験

というわけで社会科科目はすべて受験しました。
ちなみに、英語は免除を狙うほうが楽だと思います

3.1次試験対策:日本地理

まずは前年度の過去問(H30年度)を解きました。
結果は43点でした。
合格ラインが70点なので、かなり厳しいです。
この結果から、地理がもっとも時間がかかると思い、最初に取り掛かりました。

日本地理の勉強を始めるときに、注意しなければならないポイントがあります。
それは、「地理」という言葉に騙されてはいけない、ということです。

僕のなかでの「地理」は、中学や高校で学習する科目のことでした。
おそらく多くの方が、そう思うのではないかと……。
当然、僕は参考書コーナーに行って、中高生用の地理テキストを漁りました。
そして4,5冊を見たところで気付くのです。
「これじゃ通訳案内士の地理には通用しない」と。

通訳案内士の過去問を解けばわかりますが、学校科目の「地理」とは異なります
全国通訳案内士の地理は、観光地の知識がどれだけあるかが問われるのです。
したがって、対策も「日本の観光地を覚える」ことに絞られます。

いろいろな参考書を比較検討した結果、「全国通訳案内士用対策のテキスト」に行き着きました。
実際に僕が購入し、1次試験対策として使ったのがユーキャンと語研の2冊です。

ユーキャンのテキストは、ポイントがきっちりまとまっていて良かったです。
最初はイラストが子供っぽいのが好きになれなくて、語研のほうを読んでいましたが、まとめ方やレイアウト的にユーキャンのほうが見やすかったので、そちらに移行しました。
左のユーキャンは、全部で5回くらい読んだと思います。
それに対して右の語研は2回くらいです。

しかし、ユーキャンのテキストを3回くらい読んだあたりで致命的なことに気づきました。

「このテキストだけでは、本番で通用しない」

ユーキャンテキストを3回読んで、知識がついてきた確信はありました。
でも、H30年度試験の日本地理を解きなおしてみると、合格点(70点)よりすこし低いくらいだったのです。
テキストを3回も読んだし、過去問を解くのだって2回目なのに、合格点に届かなかったのは大きなショックでした。
しかしそれと同時に、それまでのやり方では良くないことにも気づきました。

僕は、さらに知識をつけるために、ネットで情報を集めました。
そして「旅行業務取扱管理者」用のテキストを購入することにしました。
実際に買ったのが、こちらです。

2019国内観光資源

国内観光地理サブノート』(タイトルをクリックすると、商品ページに飛びます)

2019国内観光資源』は、都道府県の名所、温泉、山、特産品、イベントなどが細かくまとめられたテキストです。
そして『国内観光地理サブノート』は、書き込み式のノートです。『2019国内観光資源』と対応しているので、使いやすいです。
僕はいきなり書き込まず、問題集のように別のノートに何度も書きながら覚えていきました。最終的にサブノートに書き込んだのは、7周くらい繰り返したあたりでした。

結果的に、これらのテキストは「大当たり」でした。
どの年度の過去問をやっても、合格点をしっかり取ることができて、自信がつきました。
いつしか「合格点を取る」という目標は、「満点を取る」という目標に変わり、地理ならどんな問題が来ても大丈夫と思えるようになりました。

『2019国内観光資源』、『国内観光地理サブノート』、それとユーキャンのテキストがあれば、通訳案内士の地理は大丈夫だと思います。
僕はこのテキストと勉強法で、2019年度の試験で、地理95点(自己採点)を取りました。
問題が易しめというのもありましたが、テスト中は楽勝モードで行けたし、地理が最初のテストだったので、いい勢いがつけられました。

※『2019国内観光資源』は、最新版が出るかもしれないので、JTB総合研究所のサイトをチェックしたり、問い合わせてみたりしてください。

4.1次試験対策:日本歴史

H30年度の過去問は、57点でした。
地理ほどではなかったにしても、合格点には程遠いところからのスタートでした。

日本史はユーキャンのテキストから始めましたが、どうもしっくりこなかったので、語研のほうに変えました。
こちらのほうが、歴史の解説が深かったので、読んでいて楽しかったです。
ただ、この1冊では少し不安だったので、山川の『書きこみ教科書詳説日本史―日本史B』を使って、細かいところまで知識をつけるようにしました。

このテキストは全部やっていません。
日清戦争以降は、平和な内容でなくなるため、試験には出ないと踏んで取り組みませんでした。実際の試験にも出なかったです。

ほかにも、『旅に出たくなる地図』シリーズや『ブラタモリ』シリーズ全巻を買いました。

楽しんで勉強できましたが、これが試験に直結したかと言うと、わかりません。
というのも僕が受験した2019年度の日本史は、「激ムズ」だったからです。
市販のテキストで対策したところで、安定した点数が取れるかどうかの保証がまったくありません。
実際、僕も日本史の点数はボーダーギリギリ(69点・自己採点)でした。
69点というのは、普通のレベルなら「不合格」のところです。

ただ、試験を受けて1つ分かったのは、日本史のテキスト類から知識を得るよりも、地理から派生させて歴史的なことを覚えていくほうが対策になるということです。
それから『地図で訪ねる歴史の舞台』や『旅に出たくなる地図 日本』は、読み物としておもしろかったです。
さらに加えると、書籍版『ブラタモリ』は、読んでいて面白かったし、実際のテストにも役立ちました。僕は往復の通勤時間でずっと読んでいました。

2018年度試験まで、日本歴史はずっと簡単めだったので、完全に高をくくっていました。
しかし、問題が難化するなんて誰が予想できたでしょう。
仮に予想できたとして、どんな対策ができるのでしょう。
難しい問題を想定した対策は、あまり効率的ではないし、楽しくないとも思います。
次年度以降にどんな問題が出されるのか、そんな知りようのないことを気にするよりも、受験者としては、過去問に基づいた勉強をして、通訳案内をするうえでのベースの知識を作っていくほうが良いと思うのです。

そんな勉強をしたい方には、上で紹介した本はオススメです。

5.1次試験対策:一般常識

H30年度の過去問は、26点でした。
合格ラインの30点には、少し及ばない点数でした。

一般常識という科目ですが、正確には「時事問題」といったほうが正しいかもしれません。
といっても「ニュース検定」のような、政治的、国際的なことが問われるわけではありません。あくまでも日本の観光にとって重要なイベント、システム、データに関する細かいことが問われます。
対策としては、普段からニュースを見ておく、訪日外国人観光客の数や内訳を覚える、といったことが必須事項となります。

ニュースレベルの知識は「持っていて当然」と思ったほうがいいです。
大事なのは、自分が観光案内をするうえで、そのニュースがどう関わってくるかを考えて、必要になるかもしれない知識を自分で深めていくことです。

例えば、2019年度の問題には、ラグビーワールドカップに関する問題がありました。
内容はこんな感じです。

Q:ラグビーワールドカップの試合が開催される都市の組み合わせで、正しいものを選びなさい。
① 新潟市・気仙沼市
② 東大阪市・釜石市
③ 盛岡市・京都市
④ 陸前高田市・名古屋市

ラグビーワールドカップがあることくらい、誰でも知っています。
通訳案内士にとって大事なのは、どの都市で試合があるのか、どの日程で試合があるのか、どこの国が参加するのか、次回の開催都市はどこか、などです。
「観光」がすべての知識のベースになります。
勉強も、そこから出発して、知識をつけていくのが良いと思います。

テキストは、先ほど挙げたユーキャンと語研が良かったです。
僕はその2冊しか使っていません。
あとはニュースをなるべく見るようにして、知識を入れていきました。

6.1次試験対策:通訳案内の実務

通称「実務」は、2018年度試験からの新科目です。

僕は2019年度受験だったので、過去問は1回分しかなく、やや心細かったです。
実際に過去問をやるとわかりますが、実務は「通訳案内士法」や「旅行業法」の内容がどれだけ頭に入っているかで決まります。
逆にそれをやらないと、点数は安定しません。

「常識があれば解けそう」と思うような問題なのですが、実際のところ、ちゃんとした知識がないと解けません。

テキストはユーキャンなり語研なり、どちらでも大丈夫です。
僕はその2冊しか使いませんでした。
どちらとも、重要なポイントが絞られているので、効率よく勉強できます。
そこを押さえれば合格点(30点)はしっかり超えると思います。
僕はそれを怠ったため、ギリギリのライン(28点・自己採点)でヒヤヒヤすることになりました(1次試験後にテキストを見直してみたら、自分が間違えた問題のところがバッチリ書いてありました。読んでおけばよかったです、本当に)。
テキストの内容を頭に入れてほしいのは、そんな僕の経験からです。

7.1次試験の結果

僕の1次試験の自己採点は、以下の通りです。

日本地理:95点
日本歴史:69点
一般常識:31点
通訳案内の実務:28点

自己採点をしたあとでは、「落ちた」と思っていました。
というのも、歴史と実務が基準点に達していなかったからです。
どちらも「あと1問正解していれば……」という結果でした。

ただ、ウソかホントかわかりませんが、全国通訳案内士の1次試験には「点数調整」というものが存在するそうです。
要するに、平均点が低い時には合格点を下げる、という制度です。

僕の自己採点が間違っていたのか、点数調整があったのか、そこは謎のままです。
しかし、僕みたいに、落ちたと思っても合格になる可能性はありますので、ギリギリの場合は2次試験対策をしておいたほうが良いと思います。

僕は落ちたと思って諦めていたため、1次試験合格を知ってから慌てて2次試験対策をするはめになりました。

8.2次試験対策

1次試験の結果発表が2019年11月8日でした。
2次試験は2019年12月8日です。

つまり、1次試験の合格発表から、ちょうど1ヶ月しかありません。
僕は1次試験合格発表からわずか10分後に、2次試験対策を始めました。

落ちた、と諦めていたことを後悔しました。
繰り返しになりますが、ボーダーラインに乗っているなら、2次試験対策をやっておいたほうがいいです。

僕が2次試験対策に使ったのは、以下の2冊です。
『全国通訳案内士試験 英語「一次・二次」直前対策』
『日本事情2020』

2次試験は口述試験で、概要は以下のとおりです。

1.試験時間は10分程度。
試験官は、日本人1人、外国人1人が一般的だそうです。

2.まずはプレゼンテーションから
その場で配布される日本語で書かれた3つのカードから1つを選択し、そのテーマについて2分程度のプレゼンテーションを行います。
プレゼンテーションの内容について質問されるので、それに答えます。

3.続いて英訳テスト
試験官が日本語で読み上げる内容について、1分程度で口頭による英訳をします。その際、配布される紙とペンでメモを取ることが許されます。
それから英訳した内容に関連した質問がされるので、外国人面接官をお客様と想定して回答し、全国通訳案内士として適切な対応ができることを示します。

僕にとっては、プレゼンテーション試験がネックでした。
どんなトピックが来てもプレゼンテーションできるのが理想だけれども、1ヵ月しかないので、テーマを100個も200個も網羅するような余裕はありません。
いろいろ考えた末に、「ここは外せない」と思ったテーマを絞り込み、テンプレートを作って、それを覚える作戦でいきました。

僕がテンプレートを作ったトピックは以下の6個です。

1.浅草:自分でも行ったことがあるので、話題を広げやすかったです。

2.日光東照宮:日本といえば神社、と考えて、1つくらいは紹介できるようにしました。自分でも行ったことがあるので、テンプレートが作りやすかったです。

3.姫路城:お城についても1つくらいは紹介できたほうがいいと考えて、姫路城を選びました。テンプレートを作りやすかったのが理由です。

4.禅:個人的に好きなので選びました。禅というメインテーマから、茶道・華道・水墨画・わびさび、などのサブテーマに広げやすかったので、コスパの良いトピックでした。

5.相撲:これも個人的に大好きだったので、絶対に紹介できるようにしておきたかったです。好きなトピックだと、テンプレートは作りやすかったです。

6.旅館:宿泊についても紹介できたほうがいいと思って選びました。

この6つのトピックを、それぞれ2分で紹介できるテンプレートを書いて、ひたすら覚え込みました。
テンプレートの英文は、上記2冊を参考にしながら、自分で書きました。
スラスラ言えるようになってきたら、ストップウォッチで時間を測りながら、2分で読み切るためのペースを身体にしみこませました

もう1つ行った対策が、『全国通訳案内士試験 英語「一次・二次」直前対策』の巻末にある「外国語通訳問題攻略法&トレーニング」です。
日本文化の簡単なプレゼン+通訳案内時に想定されるシチュエーションと対処法が10セクションあるので、それらをすべて暗唱・シャドーイングしました。

僕がやった2次試験対策はこのくらいです。
1ヵ月という期間だと、これだけやるのが精一杯だったかなと思います。
あまり手を広げすぎても消化しきれないし、個々の完成度もイマイチになるので、あえて「少なく、そして完璧に」を軸にして勉強しました。
完璧にできるものが少しでもあると、気持ちは楽になります。

「もし対策したことがでなかったら、どうしよう」と思うと不安になります。
でも、ちゃんと対策をやっていれば、試験では絶対に役立ちます。
たとえ「相撲」というトピックが出なかったとしても、話のついでに相撲を語ることはできますし、準備した英語がスラスラ出てくると、一気に安心できます。
その点、定番のトピックをテンプレート化しておくほうが得策かもしれません

9.2次試験レポート

僕が実際に受験した2次試験の様子をお伝えします。

試験日 2019年12月8日(日)
試験会場 日本大学 三軒茶屋キャンパス
受付時間 9:00 ~ 9:25
試験時間 10:00から
解散時間 11:15

僕は朝一での受験でした(早起きが大変だった……)。
人によって時間枠は異なります。

受付を済ませると、待合室に案内されます。
4人1組のグループとなっていて、僕の会場では13グループありました。
なので受験者は52人でしょうか。
欠席者は2,3人いらっしゃいました。
年齢層は40~60代が中心という感じでした。
男性はスーツ姿が多かったですが、僕はパーカーとスニーカーで行きました。

待合室にいるあいだは、テキスト類は自由に見ることができます。僕の周りは予備校に通っている人たちばかりで、使い込まれたテキストやプリント類をじっくりと見返していました。
僕はとても緊張してしまって、水ばかり飲んでいました。
余計に緊張してしまうので、テキスト類は見ませんでした。

僕は後ろのほうのグループだったので、待ち時間はけっこう長かったです。
順番が来ると、待合室から試験教室の入口まで案内されます。
外の椅子に座って待つこと1分、部屋の内側からドアが開けられ、日本人試験官から「Please come in.」と声をかけられて入室し、試験が始まります。
2次試験の流れは、こんな感じでした。

まず、名前、生年月日、どこから来たか、を英語で答えるように、日本人試験官から指示されます。
次に、日本人試験官がプレゼンテーション問題について説明し、外国人試験官からトピックが3つ書かれた紙を手渡されます。僕の場合、雑談などは一切ありませんでした。

渡されたプレゼンのトピックは、「万葉集、まんじゅう、ラッシュアワー」でした。
元号が令和に変わったことで、万葉集はマストだったのでしょう。
僕はそのことをすっかり忘れていて、2次試験対策では万葉集をノーマークにしてしまっていました。仕方なく、アドリブで話せそうだった「ラッシュアワー」を選びました

プレゼン内容を紹介します。

「ラッシュアワーとは、日本の通勤時間に見られるものです。朝の6:00~9:00のあいだに起こり、この時間帯は電車などの交通機関がとても混雑します。大荷物を持っていたりすると大変な思いをするので、なるべくはラッシュアワーを避けて移動したほうが楽です。特に都市圏で起こるので、そのあたりを旅行する際は、注意したほうがいいです。それから―」

と、話している途中で「時間です」と言われ、終了となりました。
締めのセリフはしっかり練習してきたのに、予想外のトピックが来たせいで焦ってしまい、べらべらと話し続けてしまいました。
一瞬、「やらかしたな」という空気が流れました。

落ち込んでいる暇もなく、Q&Aに移ります。
外国人から質問がされ、それに対して回答をしました。

Q:ラッシュアワーの時間に移動したいが、どうしたらよいか?
A:なるべく荷物を持たないほうがいいです。

Q:荷物を持って移動をしたいが、どうしたらいい?
A:平日なら、ラッシュアワーを避けたほうがいいです。お昼ごろや、午後など、時間をずらすと移動しやすいです。

Q:大きな荷物を持って空港から移動したいが、ラッシュアワーの時間にぶつかりそうだ。どうしたらよいか?
A:お金がかかるので、あまり勧めたくはないが、タクシーを使うと良いです。

僕の時は、質問は3つでした。

プレゼン問題が終わると、次は通訳問題です。
お題は「箱根」でした。

日本人試験官が、箱根についての文章を読み上げます。
内容はこんな感じ(覚えている限り)で、メモを取りながら聞きました。

「箱根は東京からアクセスしやすく、文化や自然の魅力が多いところです。芦ノ湖には遊覧船があり、湖の風景を楽しむことができます。温泉施設も豊富です……」

本番で読まれた文章は、これの3倍くらいありました
内容が思い出せないので、覚えている分です。

まずは上記の文章を、英語に訳します。
それから外国人試験官を旅行者に見立てた質疑応答が始まります。
シチュエーションはこんな感じでした。

「箱根で野外観光をしたかったが、悪天候のため難しい。どうしたらよいか?」

僕の答えです。

「芦ノ湖に来ましたが、悪天候のせいで野外観光が楽しめなくて残念に思います。でも、屋内でも楽しめるものがあるので、紹介させてください。オススメしたいのは箱根彫刻の森美術館です。美しい彫刻作品を見て楽しむことができ、しかも屋内なので天気を気にする必要がありません」

ここから質疑応答を兼ねた会話です。(外国人試験官:A、僕:B)

A:箱根彫刻の森美術館は、ここから遠いの?

B:そんなに遠くありません。車で30分~1時間です(正確に知らなかったので、出まかせで答えてしまいました。「詳しくはわからないのですが」のような前置きをしたほうが良かったかなと、反省しました)。

A:わお、けっこう遠いね。

B:でも移動中はきれいな景観が楽しめますよ。

A:その美術館以外に、見どころはある?

B:温泉がいいですね。

A:美術館の近くにあるの?

B:ありますよ(本当にあるかどうかは知らないけれど、とりあえず答えました)。

A:ほほう(何度か頷く)。

B:美術館を歩いて疲れたあとだと、温泉はすごく楽しめると思います。露天風呂もありますからね。

A:でも雨が降っているんでしょ?

B:雨のなかの露天風呂は趣がありますよ。いい経験になると思います。

A:なるほど、興味深いね。でもタトゥーがあるんだけど大丈夫かな?

B:はい、温泉の責任者に確認してみます。シールでタトゥーを隠せば温泉には入れるところが多いですよ。

A:なるほど、ありがとう。

という流れでした。

芦ノ湖から箱根彫刻の森美術館までは車で15分だと、試験後に調べて分かりました。
出まかせを言ってしまったことが減点につながるのではないかと心配しましたが、幸運にも見逃してもらえたようです。
「黙らなかったこと」と「明るく話せたこと」が大きかったのかもしれません。
この2点は、口述試験では非常に大事なことだと思います。

面接試験が終わったあとは、ふたたび待合室に集められて、全員が揃ってから解散となりました。
1ヵ月かけて準備してきたことを10分の試験で出し切れたと思う一方で、もうちょっと念入りに知識を入れておいたほうがよかったとも思いながら帰路につきました。
(少なくとも万葉集はチェックしておくべきだった……)

10.おわりに

2次試験から2ヵ月後、2020年2月7日に合格発表がありました。
僕は、無事に合格しました。

勉強を開始してからちょうど1年、嬉しい結果となりました。

勉強時間などをまとめると、以下のようになります。

1次試験
勉強期間:6ヵ月(2月~8月)
勉強時間:360時間(1日平均2時間)

2次試験
勉強期間:1ヵ月
勉強時間:50時間

2020年オリンピックを控え、外国人旅行者数が過去最大になると予想されています。
これを機に、日本を訪れてくれる人が増えていき、観光産業が活性化してくるかもしれません。
旅行者たちに日本を紹介できる人が、今後さらに必要とされるでしょう。
「世界を日本に迎えたい」という気持ちがあるのなら、ぜひ全国通訳案内士試験に挑戦されてみてはいかがでしょうか。

勉強を通して、今まで知らなかった日本の魅力に気付けるのも楽しみの1つです。

この記事が、これから全国通訳案内士を目指す方々のお役に立つことを願っています。

ご覧いただき、ありがとうございました。